ショートニングとは?体に悪い噂の真相とバターとの違い・代用法解説
お菓子やパンのレシピを開くと頻繁に登場する「ショートニング」。プロのパティシエやパン職人が絶大な信頼を寄せる一方で、ネット上では「体に悪い」「危険」といった過激な言葉が並び、使用をためらっている方も少なくありません。
この無味無臭の白い油脂は、どのような原料と製法で作られ、なぜ焼き菓子を劇的にサクサクにするのでしょうか。製菓現場の実態や2026年現在の最新油脂加工技術、トランス脂肪酸にまつわる科学的エビデンス、バターやマーガリンとの決定的な違い、さらには家庭にある材料での手軽な代用テクニックまで、調査報道の視点から徹底的に解き明かします。
📌 【この記事の重要ポイントまとめ】
- 要点1:ショートニングは水分を一切含まない純度約100%の植物性油脂で、焼き菓子の軽快なサクサク感とパンのふんわり感を生み出す優れた機能性を持ちます。
- 要点2:かつて懸念された「トランス脂肪酸」は、近年の製法革新(部分水素添加油脂の不使用化)により大幅に低減され、現在流通する市販品の多くはバターと同等以下の低トランス脂肪酸・トランス脂肪酸フリー仕様です。
- 要点3:風味とコクを求めるならバター、軽やかな食感と素材本来の香りを引き立てたいならショートニングが最適であり、家庭ではサラダ油や米油で手軽に代用可能です。
ショートニングとは?原料と製法から紐解く「純度100%油脂」の正体
ショートニング(Shortening)とは、主に大豆油、パーム油、菜種油、綿実油などの植物油脂を主原料とし、これらを精製・ブレンドした後に急速冷却しながら練り合わせて作られる固形状の純粋な食用油脂です。乳脂肪分を含むバターや、乳化剤・水分を含むマーガリンとは異なり、水分や塩分、乳成分を一切含まない「純度99.5%以上の油脂」であることが最大の特徴です。
歴史的には、19世紀末から20世紀初頭にかけてアメリカで開発されました。当時、お菓子作りや揚げ物用として重宝されていた高級油脂「ラード(豚脂)」の代替品として、安価で安定した植物油から作られたのが始まりです。「ショートニング」という名称は、英語の「shorten(脆くする、砕けやすくする)」に由来しており、まさに生地の食感を脆く軽く仕上げるために誕生した機能性油脂といえます。
伝統的な製法では、常温で液体の植物油に水素を添加して人工的に固形化させる「硬化油(水素添加油脂)」が用いられていました。しかし、この水素添加プロセスにおいて副産物としてトランス脂肪酸が生成されることが判明して以来、製造メーカー各社は技術革新を断行。現在では、パーム油の固形部分を分別利用する技術やエステル交換技術を駆使し、水素添加に頼らない安全な製法へと完全にシフトしています。

なぜサクサクになる?クッキーやお菓子作りにおける驚異の機能性
製菓・製パンの現場において、なぜショートニングがこれほどまでに愛用され続けるのか。その理由は、他の油脂には真似できない3つの物理的特性(ショートニング性・クリーミング性・可塑性)にあります。
小麦粉に水を加えて練ると、グルテニンとグリアジンというタンパク質が結合して弾力と粘り気のある「グルテン」が網目状に形成されます。パン作りには欠かせないグルテンですが、クッキーやパイ生地でグルテンが強く出すぎると、焼き上がりが硬く重い食感になってしまいます。ここでショートニングを加えると、油脂が小麦粉の粒子をコーティングし、グルテンの形成を物理的に遮断します。この性質を「ショートニング性」と呼び、水分を含まない純粋な油脂だからこそ、噛んだ瞬間にホロホロと崩れるような軽快なサクサク感を生み出すことができるのです。
さらに、ショートニングは撹拌した際に微細な気泡を大量に抱き込む「クリーミング性」にも長けています。生地の中に抱き込まれた無数の気孔がオーブンの熱で膨張することで、スコーンやパウンドケーキはふんわりと均一に膨らみます。また、常温で適度な柔らかさを保つ「可塑性(かそせい)」の温度帯が広いため、パイ生地の折り込み作業やクリームのデコレーション時にもダレにくく、作業性が極めて安定するというプロ好みの利点を備えています。
【データ比較】バター・マーガリン・ラードとの決定的な違い一覧
お菓子作りや料理で比較されることの多い4大油脂(ショートニング、バター、マーガリン、ラード)。それぞれの原材料、成分構成、風味、コストの違いを比較表にまとめました。
| 油脂の種類 | 主な原料・油脂分 | 風味・食感の特性 | コスト・主な用途 |
|---|---|---|---|
| ショートニング | 植物油脂(パーム油、大豆油等) 油脂分:約99.5%以上(水分ほぼゼロ) | 無味無臭。素材の香りを邪魔しない。 非常に軽くサクサクした食感。 | 中〜安価。 クッキー、パイ、パン生地、揚げ油。 |
| バター | 生乳(乳脂肪) 油脂分:約80〜83%(水分約16%) | 芳醇なミルクの香りと深いコク。 しっとり濃厚でリッチな仕上がり。 | 高価。 高級焼き菓子、ケーキ、ソース、パン用。 |
| マーガリン | 植物油脂+乳製品・食塩・水 油脂分:約80%以上(水分約16%) | バターに似せた香料や塩気がある。 パンに塗りやすく柔らかい。 | 安価。 トースト用スプレッド、家庭料理。 |
| ラード | 豚の脂肪組織(動物性) 油脂分:約99.5%以上(水分ほぼゼロ) | 独特の動物性のコクと旨味。 サクサク感とともに力強い風味。 | 安価〜普通。 中華料理、揚げ物、ちんすこう、パイ。 |
| ※油脂含有量および成分値は日本食品標準成分表および主要製油メーカーの公表規格に基づく編集部算出データ | |||
表から明らかなように、バターやマーガリンには約16%前後の水分が含まれているのに対し、ショートニングとラードはほぼ純粋な油脂です。クッキーを焼く際、バターを使うとしっとりとしたリッチな風味になるのは水分と乳固形分によるものであり、ショートニングを使うとどこまでも軽快な歯ざわりになるのは余分な水分が一切蒸発・残留しないためです。

噂の真相を追う|「体に悪い・危険」と言われる理由とトランス脂肪酸の現在地
ネット検索で「ショートニング」と打ち込むと、サジェストに「体に悪い」「危険」「毒」といった不穏なキーワードが並びます。なぜこのような極端なイメージが定着してしまったのでしょうか。噂の真相を科学的な事実から検証します。
ショートニングが危険視された最大の理由は、過去の製造過程で生成されていた「トランス脂肪酸」にあります。トランス脂肪酸の過剰摂取は、血中の悪玉コレステロール(LDL)を増やし、善玉コレステロール(HDL)を減らすことで、心筋梗塞などの冠動脈疾患リスクを高めることがWHO(世界保健機関)などの研究で指摘されています。アメリカ食品医薬品局(FDA)が2018年に部分水素添加油脂の食品添加を原則禁止したニュースが大々的に報じられたことで、「ショートニング=危険な油」という印象が日本でも急速に拡散しました。
しかし、「過去のイメージ」と「現在の製品実態」には決定的なギャップが存在します。内閣府食品安全委員会や農林水産省の調査・指導のもと、日本の製油メーカー各社は10年以上前からトランス脂肪酸の低減化に総力を挙げて取り組んできました。
その結果、現在スーパーや製菓材料店で一般に市販されている家庭用ショートニング(ダーボン社のオーガニックマウンテンショートニングや雪印メグミルク、日清オイリオ等の製品)は、100gあたりのトランス脂肪酸含有量が1g未満、製品によっては0.5g未満(トランス脂肪酸フリー基準)まで劇的に削減されています。驚くべきことに、天然由来のトランス脂肪酸(バクセン酸など)を約2〜4%含む一般的な天然バターよりも、現代の低トランス脂肪酸ショートニングの方がトランス脂肪酸含有量が低いケースすら珍しくありません。
WHOが提示するトランス脂肪酸の摂取目標値は「総エネルギー摂取量の1%未満(一般的な成型日本人で1日約2g未満)」です。農林水産省の調査データによると、日本人の平均的なトランス脂肪酸摂取量は総エネルギーの約0.3%とされており、欧米に比べて極めて低い水準にあります。バランスの取れた日常的な食生活において、時折ショートニングを使った手作りお菓子を食べる程度で健康被害が生じる可能性は極めて低いというのが、食品衛生学における客観的事実です。
【実態検証】プロの厨房から業務スーパー愛用者まで!現場のリアルな評価
「トランス脂肪酸への懸念が払拭されたのなら、現場では実際にどう使われているのか?」——製菓のプロフェッショナルから、高コスパ食材を求める一般家庭ユーザーまで、現場のリアルな声を調査しました。
都内でパティスリーを営むオーナーシェフは、取材に対して次のように明かします。
「『バター100%=至高』という風潮がありますが、それはお菓子の設計思想によります。たとえば、宇治抹茶や高級アールグレイの茶葉、繊細なフルーツの香りを主役に据えたいサブレの場合、バターの濃厚な乳脂肪香が素材の繊細な風味をマスキングしてしまうことがあります。無味無臭の良質なショートニングを一部ブレンドすることで、素材本来の香りをダイレクトに引き立てつつ、極上の歯ざわりを実現できるのです」
一方で、SNSや知恵袋などのユーザーコミュニティで定期的に話題を集めるのが、業務スーパーなどで手に入る大容量のショートニングです。パン作り愛好家の間では、「高級食パンのようなキメの細かさと、翌日もしっとり柔らかなクラム(中身)を再現するにはショートニングが手放せない」「500g〜680g入りがリーズナブルに買えて重宝する」といった絶賛の声が多数寄せられています。
かつては「安いけれど健康面が心配」と二の足を踏むユーザーも見られましたが、近年では業務スーパーで扱われる製品もパッケージに「トランス脂肪酸フリー」「部分水素添加油脂不使用」と明記されたものが主流となっており、賢い使い分けを楽しむユーザー層が確実に広がっています。

今すぐできる手軽な代用方法|バター・サラダ油・太白ごま油の黄金比
「レシピにショートニングと書いてあるけれど、手元にない」「わざわざ買い揃えるほど頻繁には使わない」という場合でも、身近な油脂を使って簡単に代用できます。仕上がりの違いと置き換えの黄金比率を解説します。
1. バターまたはマーガリンで代用する(同量〜1.1倍)
もっとも一般的な代用方法です。ショートニングと同量(または水分蒸発分を考慮して1.1倍程度)のバターに置き換えます。リッチなコクとミルキーな香りが加わり、贅沢な味わいに仕上がります。ただし、バターに含まれる約16%の水分によってグルテンが若干活性化するため、ショートニング特有の「ホロホロ感」よりは「しっとり感・サックリ感」寄りの食感になります。
2. サラダ油・太白ごま油・米油で代用する(分量の80〜90%)
クセのない無香性の液体植物油を使う方法は、ショートニングの「素材の香りを邪魔しない」という特性をもっとも忠実に再現できます。液体油は生地に馴染みやすいため、ショートニング指定分量の80%〜90%程度に減らして投入するのがベチャつかせない黄金比です。クッキーに使うと、クリスピーで軽やかなカリッとした歯ごたえに仕上がります。
3. ラード(豚脂)で代用する(同量)
沖縄の伝統銘菓「ちんすこう」や本格的なミートパイ、中華風パイ生地を作るならラードがベストな代用品です。水分を含まない純粋な油脂であるため、ショートニングと同等の驚異的なサクサク感が手に入ります。豚脂特有の香ばしいコクが加わるため、甘みを抑えた焼き菓子やセイボリー(惣菜系)パイと抜群の相性を誇ります。
4. ココナッツオイルで代用する(同量)
植物性かつ常温で固形化する性質を活かしたいヴィーガン志向の方には、無臭タイプ(精製タイプ)のココナッツオイルが適しています。ショートニングと同量で置き換え可能で、サクサクとした心地よい食感をしっかりと再現できます。
【プロの結論】使うべき人・避けるべき人の明確な判断基準
食品に対する過度な不安や誤認は、時に「フードファディズム(特定の食品を過度に善玉・悪玉視する心理傾向)」に陥りがちです。感情論ではなく、食の目的と価値観に基づいた合理的な判断基準を提示します。
ショートニングの積極的な使用をおすすめできる人
- プロ級のサクサク・ホロホロ食感を目指す人:アメリカンクッキー、パイ生地、タルト生地を極限まで軽く焼き上げたい場合、ショートニングに勝る油脂はありません。
- 素材本来の繊細な風味を際立たせたい人:抹茶、紅茶、ココア、スパイスなどの香りをバターの乳脂肪香に邪魔されず、クリアに表現したい創作レシピに最適です。
- 手作りパンのボリュームと柔らかさを長持ちさせたい人:生地の伸びを良くし、翌日もパサつかないしっとりしたパンを焼きたい家庭製パン派に向いています。
- コストパフォーマンスと作業性を重視する人:バターの価格高騰が続く中、安定した品質と経済性を両立させたい日常的なお菓子作りに貢献します。
ショートニングを無理に使わず避けるべき人
- バター特有の芳醇な乳脂肪のコクや焼き色を最優先したい人:フィナンシェやマドレーヌのように、焦がしバターの芳醇な香気そのものが命となる焼き菓子には不向きです。
- 原材料表示を「無添加・未精製」で統一したいナチュラル志向の人:精製された加工油脂全般を食生活から完全に排除したいポリシーを持つ場合は、発酵バターや圧搾一番搾りの植物油を選択するのが無難です。
【ショートニング と は】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:ショートニングとマーガリンの一番の違いは何ですか?
A1:最大の違いは「水分と添加物の有無」です。マーガリンは植物油に水や乳成分、食塩、香料を加えてバターに似せて乳化させたもの(油脂分約80%)ですが、ショートニングは水分・塩分・香料を含まない無味無臭の純度99.5%以上の純粋な油脂です。
Q2:市販のショートニングにトランス脂肪酸はどのくらい含まれていますか?
A2:現在、日本の主要メーカーが市販している家庭用ショートニングの多くは製法が改良されており、100gあたりのトランス脂肪酸量は0.5g〜1g程度(製品によっては「トランス脂肪酸フリー」表示)です。これは一般的な天然バター(100gあたり約2g前後)と同等かそれ以下の数値です。
Q3:開封後のショートニングはどのように保存すれば良いですか?
A3:ショートニングは水分を含まないため腐敗しにくく、直射日光や高温多湿を避けた涼しい冷暗所での常温保存が基本です。冷蔵庫に入れると硬くなりすぎて作業性が落ちる場合があります。酸化を防ぐため、密閉容器に入れて開封後は半年を目安に使い切るのが理想的です。
Q4:業務スーパーなどで安く買えるショートニングの品質は大丈夫ですか?
A4:業務スーパー等で流通している大手輸入・国内製造のショートニングも、日本の食品衛生法およびトランス脂肪酸低減基準をクリアしています。パッケージに「ノン水素添加」「トランス脂肪酸ゼロ」等の記載がある製品を選べば、高いコストパフォーマンスとともに安心して製菓・製パンに活用できます。
まとめ:正しい知識で食卓の美味しさと安心を両立させる
ショートニングは、かつてのラード不足を補うために生まれ、油脂加工技術の進歩とともに進化を遂げてきた、製菓・製パン界になくてはならない機能性油脂です。
過去のトランス脂肪酸にまつわるネガティブな風評だけにとらわれ、その圧倒的な機能性を遠ざけてしまうのは非常にもったいないことです。現代の技術によって安全性が大幅に高められたショートニングの特性を正しく理解し、バターの豊かなコクとショートニングの軽快なサクサク感をレシピに応じて賢く使い分けることこそが、日々の手作りをワンランク上の仕上がりに導く鍵となります。 (出典: ショートニング と は(Yahoo!ニュース))